kawaguchiの日記

首都大学東京・経済学徒の講義ノート

経済学説史 第4回

重商主義

貿易収支を黒字にすることを最優先する経済政策思想(貿易差額主義)

アダム・スミス以前の16~18世紀ごろのイギリスの経済思想の総称

 

○物価革命

大航海時代の主目的は、金・銀などの貴金属を求めるものだった。

マルコ・ポーロが記述した「黄金の国ジパング」を求めたことや、南米のポトシ銀山などがその例である。

南米からヨーロッパへ大量の銀が流入し、国内の貨幣流通量が激増した。この結果、1470~1620年のあいだに、物価が6倍に上昇した(貨幣価値が1/6倍になった)

※フィッシャーの交換方程式

M・V=P・Y   M↑・V=P↑・Y

 

マルティン・デ・アスピルクエタ

スペイン人の神学者

貨幣は、需要が大きく、供給が不足しているときに高価になる、と証言している。

貨幣供給が過大になるとインフレに陥ることを直感的に見抜いていたのではないかと考えられる。

 

○ジャン・ボダン

物価上昇の5要因

・金銀の豊富さ→金属貨幣本体の価値が下がる

・独占→有効需要に対して、供給を意図的に抑えて価格をつり上げる

・輸出や浪費による財の希少→当然ながら輸入は抑制されていたから、国内供給が過小

・王侯貴族の贅沢→特に奢侈財の供給不足

・金属貨幣の金銀含有量の低下→少ない金属量で多くの貨幣を発行し、インフレへ

 

○イギリスの貿易商人団体

・貿易商人組合:地中海でイタリアなどと交易

・レヴァント会社:オスマン=トルコと交易。自衛のために武装もしていた。

東インド会社:アジア(インド、東南アジア、中国など)を独占。軍事力で現地を統治

 

 

トーマス・マン

貿易商で重商主義者。東インド会社の存在を擁護した。

当時は、彼の著作が経済学の基本的原理だった。

貿易差額が国富に直結すると主張。

 

○イギリスの政策メニュー(貿易差額主義の3本柱)

・国内生産の拡大→ギルドなどに特権を付与

・贅沢消費の抑制→アジアからの輸入品をなるべく消費しない

・アジア貿易→現地産品を独占

 

○ジョザイア・チャイルド

東インド会社の重役。王室への賄賂で権益を確保。名誉革命で立場が危うくなるが、王室への貸付で権益を保つ。

 

○利子論争

イギリスはオランダよりも利子率が高いので、引き下げるべきでは?

オランダは貿易にかんしてイギリスの競合国。

チャイルド:利子率引き下げ派

高い利子率によって、船を造り、人手を集めるための資金借入が抑制されて、国富の根源たる貿易業が阻害されてしまう。

ジョン・ロック:引き下げ反対派

金利規制をしても投資抑制どころか、借り方は法の抜け穴をつく。

利子率の上限規制は、高リスクな事業に対して高リターンを望めないことを意味するので、貸し手のインセンティブを失わせる。

 

この論争において、本来オランダほどリターンが見込めないから利子率が高いのであるのに、チャイルドは利子率が高いから投資ができずリターンが見込めない、と原因と結果の関係を取り違えていた。